クレーマー対応が必要な理由とは?
コールセンター業務において、クレーマー対応は避けて通れない重要課題です。誤った対応は、企業イメージの毀損や従業員の離職に直結するリスクがあります。
本章では、コールセンターにおけるクレーマー対策や明日から使えるテクニック、また、なぜコールセンターがクレーマー対応に特化した仕組みを構築すべきなのか、その背景と必要性を明らかにします。
クレームとクレーマーの違いを正しく理解する
「クレーム」と「クレーマー」は混同されがちですが、意味は大きく異なります。
クレームは本来、商品やサービスに対する正当な不満や要望であり、企業の改善機会となる声です。
一方、クレーマーは、不当な要求や過剰な苦情を繰り返す顧客のことで、対応を誤ると現場を疲弊させます。
まずはこの違いを社内で共有し、適切な対応を選別する基準としましょう。
なぜコールセンターはクレーマーの標的になりやすいのか
コールセンターがクレーマーの攻撃対象となりやすい理由は、「匿名性」「即時対応」「企業の窓口」という3要素にあります。声だけでやり取りが完結するため、相手に対する心理的なブレーキが働きにくく、ストレスのはけ口として悪質なクレームが集中しやすいのです。また、どんな問い合わせにも応じる“何でも屋”的な立場が、クレーマーの過剰な期待を招く原因にもなります。
感情別に見る!クレーマー対応の実践テクニック
クレーマーは、単なる怒りだけでなく、不安・悲しみ・攻撃性などさまざまな感情を背景にしています。相手の感情を正確に見極め、それに応じた対応を取ることで、不要なトラブルや感情の激化を未然に防ぐことができます。
以下では、代表的な感情タイプ別に対応術を解説します。
怒鳴る・詰めるタイプへの対処法
怒鳴る・威圧的に詰めるタイプは、相手を支配しようとする意図が強い傾向があります。この場合、感情的に反応せず、「事実ベースでの返答」と「一定の距離感の維持」が重要となります。
例:「お客様のお怒りはごもっともです。確認のため少々お時間をいただいてもよろしいでしょうか」といった冷静かつ尊重を含んだ対応が効果的です。沈黙や過剰な謝罪は逆効果になるため、落ち着いた口調とテンポを意識しましょう。
長時間話し続けるクレーマーへの対処法
延々と話し続けるタイプのクレーマーは、自分の感情や意見を整理できずにいることが多く、放っておくとオペレーターの時間を過剰に奪う危険があります。この場合、「共感→要点の整理→会話の着地点を示す」という三段階の対応が有効です。
例:「お話しありがとうございます。○○に対して不満をお持ちなのですね。今いただいた内容を確認したうえで、◯◯についてご説明いたします」と区切りを明示することで、会話を着地させやすくなります。
感情的なクレーマーに使ってはいけないNGワードとは
クレーマー対応では、無意識に使ってしまう「火に油を注ぐ言葉」に注意が必要です。特に以下のような表現は避けるべきなので気を付けましょう。
- 「それはお客様の誤解です」
- 「私の担当ではありません」
- 「ルールですので対応できません」
これらは責任回避・否定・機械的対応と捉えられ、相手の怒りを助長します。代わりに「確認のうえ、改めてご案内させていただきます」など共感+調整姿勢を感じさせる言い回しに切り替えましょう。
会話がエスカレートしそうな時の切り返しフレーズ例
クレーマー対応中、会話が感情的にヒートアップしたときにソフトランディングさせるフレーズは現場で非常に役立ちます。
- 「このままでは、正確なご案内が難しくなってしまいますので、一度お話を整理させていただけますか?」
- 「お客様の大切なお時間を無駄にしないために、今できる対応を優先して進めさせていただきたいと思います」
こうした冷静さと誠意を兼ね備えた表現が、過熱する空気を緩和させ、次の行動にスムーズにつなげることができます。
明日から使える!クレーマー対応マニュアル
現場の混乱を最小限に抑え、誰が対応しても一定の品質を保つためには、標準化された対応マニュアルの整備が不可欠です。
ここでは、初めてクレーマーに対応するオペレーターでも実践できる基本フロー、トーク例、マニュアル構築のポイントを紹介します。
初心者向け:基本フローと対応チェックリスト
クレーマー対応には、感情に左右されない「手順の徹底」が重要です。以下のようなフローに沿うことで、的確かつ冷静な対応が可能になります。
- 相手の発言を遮らず最後まで傾聴
- 事実確認と状況の整理
- 謝罪(必要に応じて)と意図の確認
- 解決策の提示と社内確認の説明
- 終了確認とフォローアップの案内
チェックリスト形式にして、対応後に自己確認やSVチェックができるようにしておくと、クオリティ維持に役立ちます。
トークスクリプト事例:ロールプレイで学べる実践例
現場ではアドリブに頼るのではなく、テンプレート化されたトークスクリプトが有効です。人によって対応レベルがバラバラになるとコールセンター全体としての対応品質を維持する事が出来ません。以下に例を示します。
想定シーン:配送遅延による怒りの電話
- お客様:「いつまで待たせるんだ!いい加減にしろ!」
- オペレーター:「ご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございません。確認のうえ、すぐにご案内いたしますので、少々お時間をいただけますでしょうか?」
こうしたやり取りを社内でロールプレイし、想定ケース別に複数のパターンを持っておくことが、即応力を高めます。
クレーマー対応を支援する社内マニュアルの作り方
マニュアルは「読ませるもの」ではなく「使えるもの」である必要があります。
以下のポイントを押さえて構築すると実践的です。
- フローチャート形式:状況に応じた判断分岐を可視化。視覚的にわかりやすいので使いやすい。
- トーク例付き:NG対応/OK対応を並列表記。
- 共有・改訂のしやすさ:クラウドやチャットツールで即更新・配信。但し、誰でも改訂出来るようにするとマニュアルのレベルを維持できなくなる恐れがあるので改訂する権限を持つ人間は限定すべき。
また、SVやベテランの知見を集約し、現場視点でアップデートを続けることが、長く機能し続けるマニュアルづくりの鍵です。
オペレーターを守る!ストレスと離職を防ぐ仕組み
クレーマー対応の現場では、精神的なダメージが蓄積しやすく、放置すれば離職やメンタル不調につながります。対応スキルの向上だけでなく、職場全体でオペレーターを守る仕組みづくりが求められます。
クレーマー対応による心理的負担とそのリスク
クレーマー対応には、以下のような心理的負担があります。
- 威圧的な言動による恐怖や自己否定感
- 理不尽な要求への無力感
- 感情の切り替えができず、業務に集中できない持続的ストレス
これらが蓄積すると、「また電話に出るのが怖い」「眠れない」など、明確な不調の兆候が表れます。企業としては、これを放置せず、早期発見と対応に取り組む必要があります。
メンタルケアにつながる職場環境の整え方
心理的負担を軽減するには、安心して相談・報告できる職場環境が不可欠です。たとえば、
- クレーマー対応後にSVが声をかける体制
- 通話終了後に一時的な離席を許容する柔軟な運用
- オペレーター同士が支え合えるチーム制の導入
また、定期的な1on1やストレスチェックを実施し、「問題を抱え込ませない」文化を醸成することも大切です。
現場を支える相談窓口と外部リソースの活用法
メンタルケア体制の充実には、第三者的な相談窓口の整備も重要です。企業内で対応しきれない場合は、以下のような外部リソースの活用を検討しましょう。
- EAP(従業員支援プログラム)の導入
- 産業カウンセラーや臨床心理士との連携
- 匿名チャット相談サービスの提供、導入ハードルが低い。
相談の「ハードルの低さ」こそが、早期ケアのカギになります。管理職が率先してこうした制度の利用を促す姿勢も求められます。
悪質クレーマーへの対応と制限措置の実務
正当なクレームと明らかに悪質なクレーマーを見分けることは、現場の混乱や疲弊を防ぐうえで非常に重要です。本章では、対応拒否(出禁)の判断基準、記録の活用方法、法的対応の実務について解説します。
対応拒否(出禁)を適用する判断基準と手続き
対応拒否(いわゆる「出禁」)は、企業側の正当な業務遂行を妨げる行為に対して適用できる手段です。以下のような行為が継続される場合、出禁を検討する余地があります。
- 同一内容の繰り返し要求
- 威迫、暴言、差別的発言
- 対応者の人格を否定するような行為
対応拒否を行う際には、以下の手順を守ることが望まれます。
- 対応履歴を詳細に記録する(日時・内容・感情変化など)
- 管理職・法務部と連携してリスク判断
- 書面や電話で通告(録音・記録を残す)
- 警察や弁護士との連携準備
企業としても「無条件に対応拒否できるわけではない」ため、あくまでも合理性と証拠の整備が前提となります。
通話録音・通話記録の保存と法的効力
通話録音は、悪質な発言の証拠保全として有効な手段です。日本の法律上、業務目的での録音は基本的に合法とされており、相手の同意は原則不要です。
録音は以下のような目的で活用できます。
- 社内判断の材料として(対応拒否の検討)
- 外部機関(弁護士・警察)への相談資料
- オペレーターの精神的負担の軽減(再発防止策の材料)
ただし、録音データの取り扱いには個人情報保護の観点から厳格なルールが必要です。保存期間・管理者の制限などをマニュアル化しておきましょう。
弁護士・警察への相談と企業リスクマネジメント
悪質なクレーマーへの対応で行き詰まった際には、法的措置を前提とした対応も視野に入れる必要があります。以下のような事例では、弁護士や警察への相談をためらうべきではありません。
- 執拗な嫌がらせ・つきまとい
- 自宅や本社への訪問予告
- 名誉棄損や業務妨害に該当する言動
企業としては、初動で相談しておくことで、対応ミスによる炎上や法的トラブルを未然に防ぐことが可能です。弁護士からの警告文送付や警察との情報共有など、法的な抑止力を背景にした対応は、クレーマーの暴走を確実に抑える手段となります。
IVRでクレーム対応の負担を削減するには?
上述してきたように、コールセンターにおける最大の悩みと言えるのが、理不尽なクレーマーへの対応です。
声を荒げる、長時間の拘束、繰り返しの電話・・・こうした理不尽なクレーマーへの対応は、オペレーターの精神的ストレスを蓄積させ、離職率の上昇や業務効率の低下につながります。
しかし、クレームのすべてを人の手で処理する必要はありませんし、そうしていては現場の疲弊度は日に日に増していきます。
ではどうすればいいのか?
「クレーム対応のストレスを“仕組み”で減らす」という発想のもと、多くの企業が注目しているのが、SUBLINE(サブライン)のIVR(自動音声応答)サービスです。
SUBLINE(サブライン)のIVRで、クレーム対応の悩みに今すぐ終止符を

SUBLINE(サブライン)のIVRは、インターネット環境があればいつでも手軽に利用できる電話自動応答サービスです。
端末や専用機器の購入は不要で、最短即日で利用可能です。
自動音声ガイダンスはテキストを入力するだけで簡単に作成できますので、自社にあったアナウンスを流すことができます。
営業時間外や休日専用のIVRが簡単に設定できます。
これ以上、理不尽なクレームに時間と人材を奪われる必要はありません。
SUBLINE(サブライン)のIVRサービスなら、迷惑電話を自動で振り分け・遮断し、現場のストレスと負担を大幅に軽減できます。
他社に学ぶ!クレーマー対応の成功・失敗事例
他社の成功事例や失敗事例は、クレーマー対応を見直す上で非常に参考になります。
ここでは、クレーマーに対して柔軟かつ適切に対応したことで顧客満足度を高めた企業の事例と、対応を誤って炎上した失敗事例を紹介し、教訓を明らかにします。
対応を工夫して企業評価が向上した好事例
ある大手通信会社では、怒鳴り声で理不尽な要求をするクレーマーに対し、対応を録音しつつ、SV(スーパーバイザー)が速やかに介入する体制を整備。対応履歴をもとにした冷静な説明と、改善策の提示によって、最終的に顧客がSNSで「誠実な対応だった」とポジティブな投稿を行い、企業イメージの向上につながりました。
また、別の通販会社では、IVRの導入によって「配送遅延・商品不良・返品」などのクレーム別にガイダンスを自動化。これにより、クレーム件数が月間300件から100件以下に減少。顧客からも「無駄に待たされるストレスがなくなった」と高評価を得ています。
SNSで炎上した対応ミスから学ぶべき教訓
ある飲食チェーンでは、クレーム電話に対してアルバイトスタッフが不用意に「うちはそういう方針なので」と回答してしまい、SNSで「顧客軽視だ」と拡散・炎上。対応記録もなく、上層部が経緯を把握できず、公式謝罪に追い込まれました。
このケースから学べるのは、全ての問い合わせ対応を記録に残すことの重要性、および現場任せにせず対応ルールを全社で徹底する必要性です。現場任せにすると、小さなミスが企業の信用を大きく損なうリスクに直結します。
管理者・SVが整えるべき組織体制と教育フロー
クレーマー対応の成否は、オペレーター個人のスキルだけでなく、組織全体の体制と教育の仕組みに大きく依存します。SV(スーパーバイザー)や管理者は、現場を支える仕組みを戦略的に設計し、継続的な改善を行う必要があります。
対応ルールの明文化とエスカレーション基準
クレーマー対応には判断が伴うため、対応ルールを文書化し、誰でも判断できる状態にすることが重要です。たとえば
- 「繰り返し同一内容で罵倒する場合は、◯分を目安にSVにエスカレーション」
- 「暴言・差別発言が出た時点で、録音保存+対応拒否の判断をSVに委ねる」
といった明文化された基準があることで、オペレーターは自信を持って行動できます。ルールは定期的に見直し、現場の声を反映してアップデートすることが求められます。
SVが行うべきリアルタイムのサポートと判断基準
SVの役割は、「最後の砦」ではなく、「現場の支援者」です。クレーマー対応の最中でもタイムリーにチャットや通話でサポートする仕組みが不可欠です。
- オペレーターのチャットに即反応する体制
- 通話内容をリアルタイムでモニタリングし、必要に応じて会話へ介入
- 「自分一人ではない」という心理的安全性を作ること
また、エスカレーションの際には、対応の打ち切りや法的措置の判断まで担うため、SV自身が研修や法務と連携し、判断軸を明確にしておくことが重要です。
現場教育の強化:ケース別ロールプレイの導入法
教育体制の中でも最も効果的なのが、ロールプレイ形式によるケース対応訓練です。実際にあった事例をもとに、以下のような研修を設計すると実践力が身につきます。
- 「怒鳴る顧客」「沈黙を貫く顧客」など感情別の対応シナリオ
- NG対応→ベスト対応へのフィードバック付き訓練
- SVや他のオペレーターによるロールモデル提示
研修内容は録音やテキストログを活用し、定期的に更新することが重要です。また、新人・中堅・SV向けなど、習熟度別の教育設計も効果的です。
よくある質問(FAQ)
クレーム対応でやってはいけない3禁は?
クレーム対応において避けるべき「3禁」は次の通りです。
- 否定しない(No):「それは違います」など、相手の主張を真っ向から否定しない。
- 言い訳しない(Excuse):「自分のせいではない」といった責任回避の言葉は禁物。
- 感情的にならない(Emotion):相手の怒りに同調して声を荒げない。
これらを避けることで、感情のエスカレーションを抑え、冷静な対応が可能になります。
クレーム対応でNGな言葉は?
NGワードは、顧客の怒りを助長させるきっかけになります。具体例を挙げます。
- 「それはお客様の勘違いです」
- 「マニュアル通りなのでできません」
- 「そう言われても困ります」
- 「こちらに非はありません」
代わりに、「確認させていただきます」「ご不便をおかけして申し訳ございません」など、共感と調整の姿勢を示す表現に言い換えましょう。
コールセンターでクレーマーにどう対処したらいいですか?
まずは冷静なトーンを保ちつつ、傾聴・共感・説明の順で対応することが基本です。必要に応じてエスカレーション判断を行い、無理にすべてを自分で処理しようとしないことが大切です。録音や記録を残し、上司やSVと連携をとりましょう。
コールセンターでうまい人の特徴は?
対応が上手なオペレーターには共通点があります。
- 話し方がゆっくり・落ち着いている
- 相手の言葉を要約しながら確認できる
- 不明な点を曖昧にせず、確認を明言して後回しにしない
- エスカレーションのタイミングを見極められる
「スキル」よりも「落ち着いた判断」と「相手を否定しない姿勢」が重要です。
クレーマー対応に向いていない人の特徴とは?
以下のような傾向がある場合、クレーマー対応には注意が必要です。
- 感情移入しやすく、すぐに動揺する
- 相手に合わせすぎて自己主張ができない
- 曖昧な対応で会話を終わらせてしまう
- 説明を急ぎ、顧客の話を遮る
対応品質を守るためには、感情のコントロールと一定の距離感を保てる人材が適しています。
クレーマーに強いコールセンターの共通点とは?
優れた対応をするコールセンターには、以下のような共通点があります。
- 対応フローとトーク例が整備されている
- SVが即応できるサポート体制がある
- IVRやナンバーブロックなどのフィルタリング機能が導入されている
- クレームの記録・分析がされている
- オペレーターのメンタルケア環境が確保されている
これらをシステムと教育の両面で整備することで、組織全体でクレーマーに強くなります。
PROFILE

-
株式会社インターパーク/SUBLINEプロジェクトリーダー・マーケティング担当
中途で株式会社インターパークに入社。
仕事で使う050電話アプリSUBLINE-サブライン-のカスタマーサポート担当としてアサイン。
カスタマーサポートを経て、現在は事業計画の立案からマーケティング担当として事業の推進・実行までを担当。
過去、学生時代には2年間の海外留学を経験。
最新の投稿
-
ワークスタイル2025年6月30日ビジネス電話に出られなかったときのメール例文集|失礼のない返信テンプレート&マナー解説
-
ワークスタイル2025年6月30日【実録】コールセンターのカスハラ事例と対策|録音・IVRで守る現場の安全とは?
-
セキュリティ2025年6月27日詐欺電話の番号を通報するには?相談窓口・ブロック対策を完全解説
-
セキュリティ2025年6月27日留守電に詐欺メッセージ?怪しい内容・番号の見分け方と安全な対策方法